妊娠・出産は人生の大きなイベントですが、その際には様々な費用がかかります。幸いなことに、日本では妊娠・出産に関する助成金や支援制度が整備されています。これらの助成金を知り、活用することで、経済的な負担を軽減することができます。以下に、妊娠・出産でもらえる主要な助成金について詳しく解説します。

1. 妊娠・出産に関する助成金の概要
妊娠・出産に関する助成金は、主に以下の3つのカテゴリーに分けられます。
- 妊婦健診費の助成
- 出産育児一時金
- 育児休業給付金
これらの助成金を受け取るためには、適切な手続きと申請が必要です。それぞれの助成金について詳しく見ていきましょう。
2. 妊婦健診費の助成
妊婦健診は母子の健康を守るために欠かせませんが、その費用は自己負担となります。自治体によっては、妊婦健診費の一部または全額を助成する制度が設けられています。
助成内容
- 妊婦健診の費用を一定回数分まで助成
- 超音波検査、血液検査、尿検査などの費用が含まれる
申請方法
- 妊娠が判明したら、住んでいる自治体の窓口で母子手帳を受け取る際に、妊婦健診受診券を一緒にもらいます。
- 受診券を使用することで、健診費用の一部または全額が助成されます。
注意点
- 自治体によって助成の内容や回数が異なるため、詳細は各自治体のホームページや窓口で確認しましょう。
3. 出産育児一時金
出産にかかる費用を補助するために、健康保険から支給される一時金です。
助成内容
- 一児につき50万円が支給されます(産科医療補償制度に加入している医療機関で出産した場合)。
- 産科医療補償制度に加入していない場合は、48.8万円が支給されます。
対象
- 健康保険または国民健康保険に加入している方、またはその被扶養者。会社員や公務員、自営業者などが該当します。
- 正常分娩、帝王切開、流産、死産など、妊娠85日(4ヶ月)以上の出産が対象となります。
申請方法
- 健康保険に加入している場合、勤務先や健康保険組合に申請します。必要書類には、出産育児一時金支給申請書、母子健康手帳、医療機関の領収書などがあります。
- 国民健康保険に加入している場合は、市区町村の役所で手続きを行います。必要書類には、国民健康保険被保険者証、出産育児一時金支給申請書、母子健康手帳、医療機関の領収書などがあります。
全国健康保険協会(協会けんぽ):https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3280/r145/
厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/shussan/index.html
注意点
- 出産育児一時金の申請期限は出産日から2年以内です。
- 申請書類に不備があると、支給が遅れる可能性があるため、必要な書類を揃えておくことが重要です。
- 妊娠・出産にかかる費用が42万円を超える場合、差額は自己負担となります。
直接支払制度
- 病院と直接支払制度を利用することで、出産時の費用が直接病院に支払われるため、自己負担が軽減されます。
- この制度を利用するためには、分娩予定の医療機関に申請書を提出する必要があります。
4. 育児休業給付金
育児休業中に収入が減少することを補うための給付金です。雇用保険に加入している場合に支給されます。
助成内容
- 育児休業開始から180日目まで:休業前の賃金の67%
- 181日目以降:休業前の賃金の50%
申請方法
- 勤務先の人事・総務部門に申請書を提出します。
- 育児休業開始後2か月以内に手続きを行う必要があります。
支給条件
- 育児休業を取得する前の2年間に、11日以上の勤務日が12か月以上あること。
- 育児休業期間中に賃金が支払われていない、または支払われたとしても休業前の賃金の80%未満であること。
5. その他の助成金と支援制度
出産手当金
- 健康保険に加入している妊婦が産前・産後休業中に受け取ることができる手当金です。会社員や公務員が主な対象者となりますが、フリーランスや自営業の方は対象外です。
- 支給額は、標準報酬日額の3分の2相当。出産手当金の支給額は、休業前の標準報酬日額の3分の2相当です。標準報酬日額とは、過去12ヶ月の平均給与を基に計算される日額のことです。
- 支給期間は、出産予定日または出産日を基準に、産前42日間(多胎妊娠の場合は98日間)と産後56日間、合計98日間(多胎妊娠の場合は154日間)が対象期間です。
申請方法
出産手当金を受け取るためには、以下の手順で申請を行います。
- 申請書の入手: 申請書は、加入している健康保険組合や全国健康保険協会(協会けんぽ)から入手できます。また、勤務先の総務・人事部門に問い合わせることも可能です。
- 必要書類の準備: 申請書の他に、医師または助産師の証明書(出産の事実を証明するもの)や、出産予定日・出産日を証明する書類が必要です。
- 申請書の記入: 申請書には、被保険者の個人情報や出産に関する詳細を記入します。また、勤務先の記入・押印が必要な場合があります。
- 提出: 記入済みの申請書と必要書類を、加入している健康保険組合や全国健康保険協会に提出します。
注意点
- 申請期限: 申請期限は、出産後2年以内です。期限を過ぎると受給できなくなるため、早めの申請が推奨されます。
- 出産日が予定日より早い場合: 産前休業期間が短くなりますが、産後休業期間は変わりません。産前休業期間中に出産した場合、その日以降の産前休業期間は産後休業期間に追加されます。
- 給与の支払い: 出産手当金が支給される期間中に、勤務先から給与が支払われる場合、支給額が調整されることがあります。具体的には、給与と出産手当金の合計額が標準報酬日額の3分の2を超える場合、その超過分が出産手当金から差し引かれます。
医療費控除
- 出産にかかる費用が一定額を超える場合、確定申告で医療費控除を受けることができます。
- 自己負担額の合計が10万円または総所得金額等の5%を超える場合に適用されます。
医療費控除の対象となる費用
出産に関連する医療費の中で、控除の対象となる主な費用は次の通りです:
- 出産費用
- 分娩費用、入院費用、分娩後のケア費用など。
- 妊娠中の健診費用
- 定期的な妊婦健診や検査費用。
- 不妊治療費用
- 不妊治療にかかる費用も対象となります。
- 交通費
- 病院への通院にかかった交通費(公共交通機関を利用した場合の費用)。
- その他の関連費用
- 入院時の食事代、病院で購入した医薬品など。
控除の計算方法
医療費控除の額は、以下の式で計算されます。
医療費控除額=支払った医療費の総額−保険金などで補填される金額−{10万円または総所得金額の5%}
具体例
例えば、1年間に支払った医療費が50万円であり、保険金などで補填される金額が5万円、総所得金額が300万円の場合。
- 支払った医療費の総額:50万円
- 保険金などで補填される金額:5万円
- 控除額の計算:50万円 – 5万円 – { 10万円または300万円の5%(=15万円)のうち少ない方 }
この場合、控除額の計算式は、
50万円−5万円−10万円=35万円
したがって、35万円が医療費控除の対象額となります。
申請方法
医療費控除を受けるためには、確定申告が必要です。以下の手順で申請を行います:
- 医療費の領収書を整理
- 支払った医療費の領収書を年度ごとに整理して保管します。
- 確定申告書の作成
- 確定申告書に必要事項を記入し、医療費控除の項目を記載します。
- 医療費控除の明細書の作成
- 国税庁のウェブサイトから医療費控除の明細書をダウンロードし、必要事項を記入します。
- 提出
- 確定申告書、医療費控除の明細書、医療費の領収書を税務署に提出します。
国税庁:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1124.htm
6. まとめ
妊娠・出産に関する助成金や支援制度は、母子の健康と経済的な安定を支える重要な制度です。以下のポイントを押さえておきましょう:
- 妊婦健診費の助成を活用して、定期的な健診を受けましょう。
- 出産育児一時金を利用して、出産費用の負担を軽減しましょう。
- 育児休業給付金を活用して、育児休業期間中の収入を確保しましょう。
各制度の詳細や申請方法については、住んでいる自治体の窓口や勤務先の人事部門に問い合わせると良いでしょう。これらの助成金を上手に活用して、安心して妊娠・出産を迎えられるよう準備しましょう。